時代が移ろっても変わらない、生で本物を体感することの意味

 芸能という分野も、見る側にとっては暇つぶし以外の何物でもないと、俳優・東出昌大は言う。

「我々は、一生懸命に良い作品を作るわけですが、見てくださる方にとっては、余暇の過ごし方のひとつなんです。ここ数年、生成AIが目覚ましい進歩を遂げていて、本物と区別がつかないような映像を作れるようになったり、いずれは台本もAIが書く時代がやってくるのかもしれません。ですが、同じ暇つぶしなら、“加工されたものじゃなく、目の前で人間が演じる舞台を生で見たい”という欲求が、加速するような気がしています」

東出昌大 撮影/有坂政晴 スタイリスト/檜垣健太郎

 ここ数年、若い世代があえてフィルムで写真を撮ったり、レコードで音楽を聴いたりするように?

「うん、そうですね。『SIDE BY SIDE』(2012)という、フィルムかデジタルかを問うアメリカのドキュメンタリー映画があるんですけど、その中で、ある人物が“絶対にフィルムだ”と言うんですね。なぜかというと“デジタルは安いクッキーのようなもので、焼きたてはうまいけど冷めたらまずい。しかしフィルムはちゃんとしたクッキーだから冷めてもうまい”というような表現があるんです」

 同じように、本物の芸術はどんなに時間がたっても「うまい」のだと、東出は言う。

「三島由紀夫作品なんかは、その最たるもので、その高みに挑戦できることに感謝しています」

■東出昌大(ひがしで・まさひろ)
1988年2月1日生まれ、埼玉県出身。2012年に映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビューし、『クローズEXPLODE』(2014)で映画初主演。『聖の青春』(16年)では第40回日本アカデミー賞優秀助演男優賞をはじめとする数々の賞を受賞。主な出演作は『コンフィデンスマンJP』シリーズ、映画『OVER DRIVE』(2018)、『福田村事件』『コーポ・ア・コーポ』(2023)、舞台『豊饒の海』(2018)、『人類史』(2020)、『ハイ・ライフ』(2023)など多数。

スタイリスト:檜垣健太郎
衣装:ジャケット143,000円・シャツ75,900円・パンツ96,800円(すべて税込価格)
ブランド名:ワイズフォーメン
問い合わせ先:ワイズ プレスルーム/TEL 03-5463-1540

■作品情報
『サド侯爵夫人』
作:三島由紀夫
演出:宮本亞門
出演:成宮寛貴、東出昌大、三浦涼介、大鶴佐助、首藤康之、加藤雅也
東京:2026年1月8日(木)〜2月1日(日) 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
大阪:2026年2月5日(木)〜8日(日) 森ノ宮ピロティホール
愛知:2026年2月13日(金)・14日(土) とよはし芸術劇場
福岡:2026年2月17日(火)・18日(水) 福岡市民ホール中ホール
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