二度目で変わるシーンの印象「また違った楽しみ方ができるかと」

 準備は入念に行っていたが、いざ現場に入ってみると、予想と違う感覚になったこともあったという。

「会話のなかで外来語を言ってはいけない、という“外来語禁止ゲーム”をするシーンがあるんですけど、現場に入ったら、台本を読んでいたときに思っていたよりも、予想以上にツラいシーンだなと。はたから見れば幸せなシーンなんですけど、涼は恵のふりをしなければいけないんです。それに、このシーンでは恵がやってきたことがまったく分からないという状況が垣間見える瞬間なので、幸せそうに見えながら、実は恵になりきれていない、それが亜子にバレてしまうんじゃないか、という不安も浮き彫りになる…という場面なんです。だから、涼の心情からすると、きついシーンなんですよね」

 本作を一度観て、すべてを理解したうえでもう一度観ると、また違う受け止め方になりそうですね、と聞くと、「なると思います」と福士さん。

「作品は前半の部分で、どういう話になっているんだろう?とお話の全貌がわからないまま進んでいって、後半になると少しずつわかってくる構成になっているので、まさにそうだと思います。監督が、台本の流れとは順番を入れ替えて編集されている箇所もあって、台本を読んだときよりも、完成されたもののほうがミスリードされる感覚だったりもして、後からギュッと心をつかまれるような構成になっているかと。もう一度見ていただくと、また違った楽しみ方ができるかと思います」

 福士さんと亜子役を演じた福原遥さんが生み出す繊細な表情と言葉のやり取りが胸を打つ本作。お2人の中で、どのようにこの世界を作り上げていったのだろうか。

つづく

ふくし・そうた
1993年5月30日、東京都出身。身長183cm。2011年、ドラマ『美咲ナンバーワン!!』(日本テレビ系)で俳優デビュー。同年、「仮面ライダーフォーゼ」(テレビ朝日系)でテレビドラマ初主演を果たす。主な出演作には、映画『好きっていいなよ。』(2014年)、『神さまの言うとおり』(2014年)、『ストロボ・エッジ』(2015年)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016年)、『BLEACH 死神代行篇』(2018年)、テレビドラマでは朝ドラ「あまちゃん」(NHK/2013年)や「恋仲」(フジテレビ系/2015年)、「神様のカルテ」(テレビ東京系/2021年)などに出演。2023年には海外ドラマ「THE HEAD」シーズン2に出演するなど、活躍の場を広げている。

▪︎ヘアメイク:永野あゆみ
▪︎スタイリスト:菊池陽之介
▪︎衣装クレジット
ジャケット5万3900円、パンツ3万8500円/ともにマーカ(パーキング 03-6412-8217)、靴29万400円/ジョンロブ(ジョン ロブ ジャパン 03-6267-6010)、その他スタイリスト私物

Ⓒ2025 映画『楓』製作委員会

作品情報
映画『楓』
▪︎出演:福士蒼汰 福原遥     
宮沢氷魚 石井杏奈 宮近海斗
大塚寧々 加藤雅也 
▪︎監督:行定勲
▪︎脚本:髙橋泉
▪︎原案・主題歌:スピッツ「楓」(Polydor Records)
▪︎音楽:Yaffle
▪︎プロデューサー:井手陽子 八尾香澄
▪︎製作:映画『楓』製作委員会 
▪︎制作プロダクション:アスミック・エース C&Iエンタテインメント 
▪︎配給:東映 アスミック・エース
Ⓒ2025 映画『楓』製作委員会