ピュアに競技を追求する姿がかぶる「超ベテラン選手」

 圧倒的な成績を残し続けてきた大谷選手。トップに居続けることでおごり、成績を落としていく選手も多いが、彼にそういうことはないのだろうか?

為末「あんなにきれいに成長し続けていて、同時に素直さが残るタイプの選手は、なかなかいないと思います。すがすがしく、ピュアに野球を追求している大谷選手の姿には、サッカーの三浦知良選手(56)の姿が重なりますね。とにかくサッカーが好き。サッカーしかない。常に前向きでまっすぐで、サッカーを見据えている。大谷選手もずっとシンプルに野球に向き合っている素直さを感じますよね」

 アスリートが競技とピュアに向きあいつづけることは、難しいのだろうか。

為末「プロスポーツは余計にそうでしょう。グラウンドではヤジもあるでしょうし、いろんな雑音が聞こえてきますから。スポーツでは、自身のコンプレックスをエネルギーにするというパターンは多いんです。周囲を見返したいとか、自分の力を証明したいとか。
ただ、大谷選手はそういうものがなく、本当にピュアに野球に向き合っているように見えます」

 圧倒的な身体能力だけではない。大谷選手の競技に対する向きあいかたも活躍の理由だという。為末さんの鮮やかな分析で浮かび上がった「奇跡的」な大谷選手の今後に期待したい。

■為末大(ためすえだい)
元陸上選手。1978年広島県生まれ。2001年に開催された世界陸上の400メートルハードルで、スプリント種目としては日本人初のメダルを獲得する。05年の世界陸上でもメダルを獲得。00年のシドニーオリンピック、04年のアテネオリンピック、08年の北京オリンピックに出場。12年に現役を引退し、現在は執筆活動やスポーツに関するさまざまな事業に携わる。近著は『熟達論』(新潮社)