自分にとっての普通が当たり前ではない「細かな違和感を丁寧に拾い上げながら、表現することを心がけています」
ASDとADHDという特性を持つ安堂を演じるにあたって、松山はとても丁寧にアプローチを行っている。その役作りを支えているのが、スタッフとともに作った『安堂ノート』である。
「安堂が持つ特性をしっかりと表現するためには、安堂なりのルールとか道筋みたいなものを、視聴者の皆さんと共有していたほうがいいんじゃないかってことを、撮影にあたって監督やカメラマンの方と話し合ったんです。その話を受けて、特性の取材を通じてスタッフの方が作ってくださったのが『安堂清春ノート』でした」
そこには、たとえば安堂がどのような服を、どんな理由で身に着けているのかといった点をはじめ、ASDやADHDという特性に由来する仕草や動きなどが、細かく書かれているという。
「このシーンではこの仕草や動きを出そう、とか、ノートの通りに一つひとつ演じていくと、どうしてもロボットのようになってしまう。なので、ノートを意識しすぎずに段取りを重ねていく中で、『ここに仕草が入る余白があるな』となったときに取り入れていくようにしました。そういった動きは台本のト書きにはなかったので、共演者やスタッフの皆さんも驚かれていましたね」
このノートの存在は、安堂の上司である門倉判事を演じた遠藤憲一や、弁護士・小野崎を演じた鳴海唯も知らされていなかったという。
――ドラマを拝見して、やらかした瞬間の顔や、そわそわしている手の動きなど、細やかな部分にまで心配りされたお芝居だなあと感じました。
「安堂の一つひとつの行動について、それが特性によるものなのか、そうではないのかということを、立ち止まって考えています。たとえば、階段を降りるときなど、何気ない動作の中にも、『自分にとっての普通』が、実は当たり前ではないのかもしれないと感じる瞬間があって。そうした細かな違和感を一つひとつ丁寧に拾い上げながら、表現することを心がけていますね」