面白いと思う引っかかりを何で表現したら一番伝わるか

「ネタの収集に関しては二通りあって、一つは過去にあった印象的な出来事を書いてるものです。これに関しては、実際にあった出来事なので、そこまで数は増えない感じです。一方で、パッと思いついた“ひらめき系のネタ”に関しては、いくらでも思いつく可能性があるんですよね。例えばこの部屋の絨毯を見てなにか引っかかったりしたら、それがネタになるかもしれないので。

 エッセイを書くこととコントを作ることの違いで言うと、面白いと思う引っかかりを何で表現したら一番伝わるかっていうことだと思うんですよね。面白いキャラの人を見たってなったら、多分文章っていうよりも演じちゃった方が早いと思うだろうし」

板倉俊之 撮影/片岡壮太

 板倉さんの中に「芸人脳」と「作家脳」が同居し、これはコント用のネタ、これはエッセイ用のネタと仕分けしているようだ。そうなると常日頃から「何か面白いものがないだろうか」というようなアンテナを張り巡らせているのだろうか。

「どうなんでしょうね。普通に芸人じゃなく生きてきたとして、ここまで考えてたのかどうかはちょっとわかんないんですよね。何かに引っかかろうと思って生きてないけど、なんか勝手に引っかかるって感じですかね。

 エッセイの中で“右、左、右”っていうエピソードがあるんですけど(道路の横断の際に“右、左、右”と見てから渡るように言われ、最後の右の後にさらに左が続き永遠に渡れないのではと思ってしまう話)、これ本当に小学生の時に思っていたことなんですよ。“ずっと信号を渡れないじゃん、そんなこと言ってたら”って。でもその時ってやっぱりボキャブラリーも少ないし、この矛盾というか、引っかかっていることをうまく説明できなかったんですよね」