反応が直にくるってのが良い

 板倉さんをして「あれ以上の快感がない」と言わしめる単独ライブの魅力。それがどんなものなのか重ねて聞くと、芸人ならではの舞台と客席の関係が浮き彫りになってきた。

「反応が直にくるってのが良いんですよね。お客さんが喜んでるのを実感できるのが。逆にミュージシャンがバラード歌ってる時って、お客さんが静かに揺れてるだけだったりしますけど、あれは芸人には耐えられないんじゃないかなと思いますよ。“今大丈夫? 受けてる?”って思っちゃって。

 アップテンポの曲とかでみんながワーってやってたらちゃんと届いてるってわかるじゃないですか。バラードの時、たぶん不安になるだろうなって思うんですよ。確信が得られないっていうか、DVDとかで見ると感動してる女の人の顔とかが映るから、そういうのがあれば違うんでしょうけど」

板倉俊之 撮影/片岡壮太

 笑いとそれ以外のステージアクトにはたしかに大きな違いがある。音楽や演劇ではじっくり静かに楽しむという時間があってもよいが、お笑いにとって静まり返るということは、そのまま“ウケていない”ということになる。この緊張感を抱えながら、それでも芸人は舞台に立ち続けていく。

 様々な「THE CHANGE」を繰り返してきた板倉さん。これからも新しい魅力を世の中に発信し続けてくれることだろう。

■プロフィール
板倉俊之(いたくらとしゆき)
1978年1月30日生、埼玉県志木市出身。NSC東京校4期生で、同期の堤下敦と98年にお笑いコンビ・インパルスを結成。『爆笑オンエアバトル』や『エンタの神様』など数々の番組で活躍すると、2001年から始まった伝説の番組『はねるのトびら』のメンバーとしてお茶の間の人気者となる。最近ではYoutubeでハイエースによる一人旅などの趣味を生かした、その名も「板倉 趣味チャンネル」を開設し多くのファンを獲得。また2009年には処女小説となる『トリガー』を上梓。現在までに小説6冊を世に送り出し、作家としても才能を発揮。23年8月に最新著作として自身初のエッセイ集『屋上とライフル』(飛鳥新社)を出版。