「僕、がんになりました」
 2017年12月、自身のブログで、多発性骨髄腫という血液がんで「余命3年」であることを公表した写真家・幡野広志。以来、彼のもとには大量の人生相談が届くようになり、それらと真摯に向き合った言葉をまとめた書籍『なんで僕に聞くんだろう。』(幻冬舎)はベストセラーになり、この8月には『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』(ポプラ社)も刊行された。
 死を間近に感じながら、写真家·文筆家として活動を続ける幡野さんの人生の転機、「THE CHANGE」とはなんだったのだろうかーー。【第4回/全5回】

幡野広志 撮影/狩野智彦

 2019年以降の幡野広志さんの日常を切り取った写真付きエッセイ『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』には、以下のような一節がある。 

≪子どものころに読んだ漫画や観た映画は、大人になると感じ方が違うものだけど、まさか『ドラゴンボール』を読んで泣くとは思わなかった。≫

 果たして、幡野さんの感性に、どんな“チェンジ”が起きたのか? 

「僕は、子どもの時に大好きだった作品を、大人になってもう一度読むのが大好きなんです。それで、僕が子どもの時に流行っていた『ドラゴンボール』を読み返してみたら、子どもの時と作品の読み方が全然ちがうことに気づいたんです。

 子どもの時に読んだ『ドラゴンボール』は、“戦闘シーンがかっこいい!”って、孫悟空たちのアクションに心を奪われていたんですが、大人になって読んでみると、悟飯(悟空の息子)の境遇の過酷さに目がいっちゃうんですよ。父親の悟空を殺されて、ピッコロ大魔王に連れ去られて、戦士になるための教育を強制されて……。“まだ、5歳の子どもだぞ!”って(笑)

 それで、物語が進むと、親代わりになっていたピッコロ大魔王が、悟飯を守って壮絶な死を遂げるんですが、そのシーンで、気づいたらボロボロと泣いちゃって」