俳優人生を変えた、つかこうへいとの出会いと「眼鏡の奥の鋭い眼」

――さまざまな映画、ドラマ、舞台に出演してきたと思いますが、その中で、俳優として大きな影響を与えた作品や出会いといえば、何でしょう?
「やっぱり、つかこうへい先生との出会いですね」

――つかさんとは『熱海殺人事件・平壌から来た女刑事』(05年)、『熱海殺人事件・売春捜査官』(06年)、『蒲田行進曲』(06年)の3作で、ご一緒されていますよね。
「はい。すごく衝撃的でした」

――具体的には、どんなところが?
「先生は、その俳優さんを見てから、その場で、お芝居の演出やセリフをバーッて決めていったりするんですよね。もちろん台本はあるんですけど、稽古に行くごとに、どんどん更新されていくんです。たとえば、今日、稽古をつけても次の日の朝には、また変わっていて……お稽古が始まると、その連続だったんです」

――舞台なら公演の期間中も変わったりしました?
「それもありました。先生の舞台は、公演中は毎日が、そんなことの連続だったので衝撃的でもあり、とても勉強になりましたね」

――すごく緊張感のある現場という印象ですが……。
「厳しい言葉が飛んでくるわけではないんですが、とにかく眼が鋭くて。色つきのレンズの眼鏡の奥にある眼が『この人は私の、どこを、何を見ていらっしゃるんだろう』って感じで……すごいんですよ、もう(笑)」

――プレッシャーですね。
「でも舞台が終わると、先生も一緒に、みんなで焼き肉を食べに行ったりするんです。先生自ら焼いてくださって、『ほら、食べろ』みたいな感じで。緩急があるというか、そういうお心遣いを感じていましたね」

――ざっくばらんな面もお持ちで、それも含めて人間味のある人だったんですね。
「そうですね。冬の時期に黒いロングコートを羽織られていたんですが、それをひるがえした後ろ姿がすごくカッコよくて、いまだに覚えています」

――今にして思うと、貴重というか宝物みたいですね。
「はい。とても刺激的でした」
 

つづく

黒谷友香(くろたに・ともか)
12月11日生まれ、大阪府出身。17歳のときにモデルとしてデビュー。1995年に映画『BOXER JOE』(阪本順治監督)で俳優としての活動を開始し、2006年に『TANNKA 短歌』で映画初主演。近年では映画『ゴッドマザー〜コシノアヤコの生涯〜』などがある。東京と千葉の二拠点生活を25年以上続けており、本格的な園芸番組『黒谷友香、お庭つくります』(BS11)で理想のお庭作りに挑戦している。5月14日から公演の舞台『はがきの王様』へ出演中。

映画『月の犬』 女が見初めなければ出会わなかった、人生に絶望した二人の男。生きることに絶望した大人たちの挽歌 監督・脚本・編集/横井健司 出演/萩原聖人 深水元基 黒谷友香 5月23日(土)から大阪の第七藝術劇場、5月30日(土)からは愛知の シネマスコーレ など、全国で順次公開予定。 ©映画『月の犬』製作委員会 ©PYRODIVE 公式サイト:https://tsuki-noinu.com/