リアルを超越する「ビリーバビリティ」の魔力
その「転換点」を演出するための最大の武器が、第四境界がこだわる「ビリーバビリティ(Believability=信憑性)」だ。作中には、スーパーマーケットのレシート、労働組合の組合証、メンタルクリニックの診察券など、実在するかのような生々しいガジェットの写真が多数収録されている。さらに初回限定特典として、作中に登場する探偵・伊澤政則の「真っ黒な名刺」が物理的に本に挟み込まれているのだ。
「名刺に記載されているメールアドレスに実際にメールを送信すると、もう一つの『人の財布』の物語が現実の自分のスマホ上で展開します。僕らは無機物に物語を潜ませていくことを『擬態』と呼んでいるのですが、これこそが僕たちだけが持っている最大のスキルだと思っています。リアリティ(現実味)よりも、ビリーバビリティ(信じられること)。ふだん触っているものと同じものが物語のキーになるからこそ、日常が侵蝕される感覚が生まれるんです」