国民的RPG『ドラゴンクエスト』シリーズのディレクターとして王道ファンタジーの最前線を走ってきた藤澤仁さん。彼がいま総監督として率いるクリエイター集団「第四境界」は、現実と虚構の境界を揺さぶる「日常侵蝕ゲーム」で世間を熱狂させている。
 その最新作となるのが、現在発売中のミステリー小説『人の財布〜高畑朋子の場合〜』(双葉社)だ。フリマアプリで誰かの使い古した財布を購入するところから始まる本作は、本に挟み込まれたアイテムを使い、登場人物と実際にメールを交わすことで、読者自身が“当事者”として物語に巻き込まれていく、かつてない「読むARG(代替現実ゲーム)」となっている。
 誰もが羨むディレクターの座という絶対的な安定を手放す――。その人生最大の転機、THE CHANGEを経て、藤澤さんは何を手放し、何をつかもうとしているのか。稀代のストーリーテラーが語る、創作の原点とエンターテインメントの未来に迫るロングインタビュー!(第4回/全5回)。

第四境界・藤澤仁総監督 撮影/河村正和

 30代から40代という、クリエイターとして最も脂の乗った時期のすべてを『ドラゴンクエスト』に捧げた藤澤さん。やがてディレクターとしてシリーズを牽引する立場となった彼に、人生最大の転機、THE CHANGEが訪れる。それは、絶対的な安定を誇るドラクエチームからの「独立」だった。
「自分の転機を振り返ると、『ドラゴンクエスト』の開発に加わったときと、辞めたとき。この二つが人生における最大のチェンジでした。なぜ辞めたのかと言えば、師匠である堀井雄二さんの実績が、あまりにもカッコよかったからです」