本当に突然、売上部数が10分の1くらいになった

 出版業界は1997年以降、26年間右肩下がりの販売実績が続いている。デジタル化が進んだ影響で紙媒体の雑誌の多くは部数の低下にあえいでいる。

吉本ばなな 撮影/湊亮太

「90年代後半くらいかな。本当に突然、売上部数が10分の1くらいになったんです。困って、他の仕事しようかなとかいろいろ考えたんだけど……なんだろう、そのときに出版業界のある種の古さとか重さというか、こういうのはたぶん無くなっていかざるを得ないんだろうなと思いました。

 文章を出すまでの時間や過程だったりとか、その過程の中に広告が含まれていないっていうのは致命的なことになるんだろうな、と思っていろいろ考えて。

 電子書籍というものが出るまでの間は本当にすごく苦しかったけど、その苦しい間は、とにかく新聞連載とか手堅くお金が入ってくる仕事をちゃんとやって、それでしのいで。電子書籍はコツコツとちょっとずつでも毎月売り上げていくものなので、電子書籍が出てよかったなって感じです」