小説家・吉本ばななの作品は多くの読者から親しまれている。1987年のデビュー以来、著作は全世界で30か国語以上に翻訳され、映像化作品も多数。国語の教科書にも作品が掲載されており、いまも10代、20代の若い読者の心を揺さぶっている。そんな吉本さんの「THE CHANGE」を深堀りした。【第1回/全5回】

吉本ばなな 撮影/湊亮太

 異常な暑さが続く今年の夏。取材場所の事務所に現れた吉本ばななさんはカラフルなノースリーブのワンピースを着用していた。「よろしくお願いします」と取材陣とあいさつし、冷えたお茶を飲んで落ち着いたところでインタビューがはじまった。

 まず、吉本さんが小説家になろうと決めた理由についてたずねると「姉は絵が本当に得意だったんです。だから、“姉が絵だったら私は文章だな”みたいな。子どものときだったので、単純に決めちゃったんですね」と話す。

 吉本さんの姉はマンガ家・エッセイストのハルノ宵子氏だ。『はーばーらいと』の表紙の海辺の風景は、ハルノ氏が描いている。

「伊豆によく家族と通っていたんですが、姉もその風景をよく知ってるので、姉がいちばんいいんじゃないかなと思って。姉は、自分はカラーの絵が下手だってすごく前から言ってたけど私はそう思ってなかったので、絶対カラーにしてほしいなって思ってました。

 姉の色彩感覚がすごい好きなんですけど、姉はなんかちょっと自信がないみたいで。本人的にはいろいろあるのかもしれない。けっこう無理に頼んで描いてもらいました」

 小説家として仕事を始めたときと、今回の新作執筆で変わったことはあったのだろうか。

「昔は作品にあらゆることを詰め込みたかったんだけど今は絞り込めるようになりました」