特殊技能にまた価値が出てくる時代

――基本的に広告が画面に表示されるネットメディアの編集を行っている身としては、吉本さんの指摘は非常に心にグッときました。

「広告を含まないながらも価値が出てくるものっていうのが、また一つ生まれてきてるとは思いますね。要するに紙の本とか。だから、過程に広告があるものと、そうじゃないもので分かれていくのかなと思ったりもします。

 あとは特殊技能を持ってる方、装丁家とか、デジタルじゃないカメラマンさんとか、ウェブじゃないほうのデザイナーさんとか。そういう人たちの特殊技能にまた価値が出てくる時代なんだなと思います」

吉本ばなな 撮影/湊亮太

 今後も吉本さんが新作を発表し続けるたびに、ファンは新刊をふところに大事に抱えて帰っていくことだろう。

吉本ばなな(よしもとばなな)
1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)、2022年『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『はーばーらいと』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。