小説家・吉本ばななの作品は多くの読者から親しまれている。1987年のデビュー以来、著作は全世界で30か国語以上に翻訳され、映像化作品も多数。国語の教科書にも作品が掲載されており、いまも10代、20代の若い読者の心を揺さぶっている。そんな吉本さんの「THE CHANGE」を深堀りした。【第5回/全5回】

吉本ばなな 撮影/湊亮太

 小説家・吉本ばななに「いままでで一番の危機」について質問をすると「一番の危機は本当に体を壊したとき、というかインフルエンザにかかったときですね」と明かしてくれた。いったいどういうことなのか。想像を超える経験を吉本さんは語る。

「当時、父と母は同じ病院に入院していたんですが、棟が違ったんですね。お見舞いに行くにも、ERみたいなところ……救急救命センターみたいなところの廊下を通らないと母の病室に行けなかった。

 で、そのときインフルエンザがものすごく流行していたから、廊下まで点滴した人があふれていて、そこを毎日通ってたら自分もインフルエンザになっちゃって。しかも2回かかって。扁桃腺が腫れちゃってすごい高熱が出たんです。

 そのとき、姉も入院していて、しかもまた面倒くさいことに、父と母の入院していた棟と、姉が入院していた病院がぜんぶ離れた場所にあったんです。

 だから誰かが動かないと物も持っていけない状況で、親しい人たちにいろいろ頼んだんです。すごく助かって、あのとき人に頼めなかったら乗り切れなかったな、って」

「誰かに頼る」ことができたから、危機を乗り切った吉本さん。しかし、ふだんはあまり誰かに頼みごとをしないという。

「私がインフルエンザにかかっていたから、たとえば私を乗せて車を運転してもらったらその人にもうつる可能性があったりすごく頼みにくい状況ではあったんですね」