巡り合わせというか、運命みたいなものに助けられた
「そういう本当に困っているという時に、たまたま知人の体が空いていて。そのあと、またすぐその知人は忙しくなっちゃって、“週に2回ぐらいなら運転できる”って状況になったんだけど、そのときはたまたまフルで体が空いてて、“今だったらできるよ”って言われて。
たぶん、私の今までの性格だと“継続的にお願いできたほうがいいから、今お願いしない方がいいかな”とか考えてた。でも、その時はもう“今だけでいいから助けて”って感じだったので、人に頼ることが自分で自然にできたんです。巡り合わせというか、運命みたいなものに助けられたな、と」
インフルエンザにかかった吉本さんを支えた人は、ほかにもいた。
「あとは、今はもうちょっとご高齢でそういうことができないんだけど、事務所のスタッフのお母さんがそのころお惣菜をたまに送ってくれてたんですね。“私が作った煮物だけど”って、田舎のお母さんみたいな感じで。
それで、ふだん私はそういうこと絶対に頼まないんだけど、その時だけは“すいません。今もう本当にピンチで、でも買ってきたものが食べたくないんです、もしよかったら料理を作って送ってもらえませんか。そしたら冷凍してずっと食べます”ってお願いして。
家族はもう勝手にふたりで食べに行けばいいじゃないですか。でも私は家から出られなかったから、そのスタッフのお母さんにおかずを作って送ってもらって、それで冷凍して、ちょっとずつ食べて回復に向かいました」と、当時を振り返る吉本さん。今でも、そのありがたみをかみしめているかのような眼差しだった。