「実体験として、思っている以上のことなのかなと」

 お医者さんがおっしゃってたのは、たとえば“ご飯まだ?”って訊かれたとき、“(もう)食べたでしょ?”と答える、これは、本人が傷ついちゃうからダメらしいんです。でも、一緒にいる人たちも急に切り替えることはすごく難しいですよね。

 もちろん認知症について調べたこともありますけど、切り替えに苦しんでいる母を見ていると、実体験として、思っている以上のことなのかなというふうに感じています。

 私には『オレンジ・ランプ』での2人の姿は、すごく奇跡的なものに見えてしまうんですけど、ご本人の諦めなかった力と、それを支えようと決意した強さのある周りの人たち、そして社会が受け入れてくれたということだと思います。

 みんながこうやって前向きに生きられたら本当に幸せなんだろうけど、やっぱりその前に折れてしまう人も多いんじゃないのかな、っていうのは思いました」

 認知症の本人と周囲の人々について、映画では丁寧に描かれている。真央が晃一を心配するあまり、晃一にとってそのサポートは過剰だと感じられるものになってしまっていた。真央と晃一、娘たち、そして晃一の勤務先の人たちが、若年性認知症の症状に向き合いながら、お互いに心地よく過ごせる方法を探る過程は、誰にとっても他人ごとではない。