本人の気持ちを尊重することが大切

 認知症本人の自由と、彼らをサポートする立場にある人々の心配について、「それを常に天秤にかけるのはすごく難しい問題だと思うんです」と、貫地谷さんは気持ちを同じくする。

「認知症の本人がどこに行ってしまうか分からない、もしかしたら帰ることができない状況になるかもしれないという中で、妻の真央さんが晃一さんを自由にするって、すごいなって思います。

 私だったら、多分ちょっと見えないところから見守るとかはしてしまうかも。それか、GPSを持ってもらうとか……そういうことはやっちゃう気がします。でも、それじゃダメなんですよね、一緒に生きていくためには。

 認知症の本人ミーティングのシーンなんていうのは、本当に相手の気持ちを尊重することを発見するというか。本人にしかわからない気持ちだなと思うので、他の人ができるのは、それを大事にすることだと思います」

貫地谷しほり 撮影/小島愛子

 自身のプライベートな経験も交え、映画の現場を経験することで生まれた「THECHANGE」について真摯に語ってくれた貫地谷さん。その言葉は、あらためて、人と人がどう関わるのか、という不変のテーマについて考えさせてくれる。

■貫地谷しほり(かんじや・しほり)
1985年12月12日生。東京都出身。02年『修羅の群れ』で映画デビュー、その後07年のNHK連続テレビ小説『ちりとてちん』でヒロインを務め、好評を博す。13年主演映画『くちづけ』(監督:堤幸彦)15年『女くどき飯』(TBS系)、23年NHK『大奥』「8代・徳川吉宗×水野祐之進編」など、その出演作は多岐にわたる。23年には第17回声優アワード外国映画・ドラマ賞を受賞するなど、声優・ナレーターとしても活躍している。

■映画『オレンジ・ランプ』
6月30日より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー
配給:ギャガ
監督:三原光尋
主演:貫地谷しほり  和田正人 
出演:伊嵜充則 山田雅人 赤間麻里子 赤井英和 / 中尾ミエ

 39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断されたカーディーラーのトップ営業マン・只野晃一は、妻・真央と娘2人と暮らしていた。会議を忘れたり、自宅への帰り道を忘れたりしてしまい戸惑う晃一のサポートを真央はなんでも先回りしてやろうとするが、ある出会いをきっかけに2人の意識は大きく変化。「人生を諦めなくていい」と気づいていく、夫婦の希望と再生の物語。
©2022「オレンジ・ランプ」製作委員会

続きはこちら!