契機となった佐野史郎さんとの二人芝居

 きっかけとなったのは、2001年10月に上演した舞台「四季シリーズ『春』」。作・演出は劇作家の山崎哲さん。共演者は、佐野史郎さん。実際に起きた殺人事件をベースにした、二人芝居だった。

「舞台の経験も少なかったですし、ましてや二人芝居で。この時期、私は体調を崩してしまい稽古期間中に入院することになり、稽古が全然できない状態で本番を迎えてしまったんですけど、演出家の言っていることがまったく理解できない、みたいな。

 でも、演出家が変なことを言っているとかではなく、私が理解できないだけということもわかっていました」

 このとき、芸歴約20年目。同世代の女の子たちが、バイト終わりの居酒屋で「とりあえず、生とタコワサ」と手軽な大人気分を味わうべく背伸びしていた頃、安達さんは痛みをともなったであろう変化と向き合っていた。

「いままでと同じようにやってはダメだ、大人になっていかなきゃな、と思いました」と、当時を振り返る安達さんは、自身の底力で、理不尽なジンクスを払拭したのだった。

■安達祐実(あだち・ゆみ)
1981年9月14日生まれ、東京都出身。デビューは2歳のとき、子育て雑誌のモデルで。1991年にテレビCM「ハウス食品 工房」への出演で知名度が急上昇し、1993年に『REX 恐竜物語』で映画デビューし、子役として『家なき子』(94年、日本テレビ系)や『ガラスの仮面』(97年、テレビ朝日系)などの代表作で国民的女優に。その後、『大奥』(03年、フジテレビ系)や『娼婦と淑女』(10年、フジテレビ系)での演技が話題となり、2013年の写真集『私生活』と、翌年年公開映画『花宵道中』でこれまでのイメージを完全に払拭。近年はファッションアイコンとしても再ブレイク中。2人の子どもを持つ母親としての顔も。10月13日より出演映画『春画先生』が公開。