芸人さんたちのすごさを目の当たりにして、自分の立ち位置がわからなくなってきた

ーー「いるだけ」というのは、いわゆる大御所の立ち位置ですね。

三宅「司会としてやっている大御所の方って、皆さん芸人として勝ち抜いてきた方たちなんです。タモリさんは密室芸人だったし、ビートたけしさんは浅草の芸人さん、明石家さんまさんは大阪の芸人さん、鶴瓶さんは上方落語の芸人さん。

 僕は芸人経験がなく、それなのに、芸人さんばかりの中でここにいていいのか、と。芸人さんたちのすごさを目の当たりにして、自分の立ち位置がわからなくなってきたんです」

 実は、三宅さんに『Mー1グランプリ』審査員の打診もあったというが、同じ理由で固辞したという。

「絶っ対に無理です。俺にはできない、と。喜劇役者ですから、台本があって演じる。どれくらいおもしろく演じられるかっていうのと、いまここで、なにもないところでおもしろいことができる芸人さんとは、えらい違いです。

 もともとテレビの世界には“コント番組ならできるぞ”と思って入ってきたんです。そしたら、司会もちょっと器用にこなせてしまって。

 コントは演じる笑いだけど、司会は素の自分を見せなきゃいけない。素でセンスよく人を回していけるか。誰かに振って、その答えに対してどう突っ込めるか。生放送だったら、時間内にどれだけきれいに終わらせる実力があるのか、そういうところをずっと見られている。

 そこで、ふと思うわけです。

 あれ? オレ、こんなに必死でこの仕事をやるんで、よかったんだっけ?」

 司会者としての三宅さんに能力と需要があるがゆえの事態だった。人知れず苦しみ、誰にも明かさなかった悩みだったが、ただひとり、三宅さんが主宰する劇団『スーパー・エキセントリック・シアター』(SET)の設立メンバーである小倉久寛さんだけは、異変を察知していたという。