“役者人生の中での名シーン”平九郎の死
2021年に放送されたNHK大河ドラマ『青天を衝け』では、吉沢亮さん演じる主人公・渋沢栄一を支える、渋沢平九郎役を熱演。道半ばで凄絶な死を遂げる平九郎の最期に、視聴者の多くが涙した。水上さん自身、“役者人生の中での名シーン”とも語る平九郎の死を経て、変わったことがあったという。
水上「この2~3年で“諦観”を身につけることができたのかなって思います。“諦める”っていう字はもともと、明らかにする=明瞭にしていくって意味の言葉だったそうです。仏教では物事への執着を捨てて悟りを開くことで、本来前向きなものだったといいます。『日本人のものの見方 ―〈やまと言葉〉から考える』っていう本を読んで学んだことなんですが、その本の中で一番印象に残っていますね。水上恒司として活動するようになった過程で、そう思う部分がたくさんあったので、すごく大人になったのかなって思います」
平九郎をはじめ、多くの役に向き合ってきた水上さん。野球部時代に野球ノートをつけていたこともあり、役作りをするうえでも“演技ノート”を作成するという。デビュー当初から現在にいたるまで、その習慣は変わらない。
水上「今でも変わらず、自分にとっての“イレギュラーなこと”と、“始まりと終わり”を書くようにしています。いろんな方の助言をいただきながら、書き留めておいたほうがいいだろうなと思って始めました。
やはり、どうしても自分の脳みその容量に限界があるので、ノートに書いて形に残しておけば、後々見返すこともできますから。見返して、1年前ってこんなこと書いていたんだなって振り返れると、面白くもありますね」