オタクの青年から正義の勇者、さらには闇金業者やAV監督まで、まったくの別人格を深く掘り下げて演じる山田孝之。幅のあまりの広さから、人は時に彼を“カメレオン俳優”と呼ぶ。声優、監督演出家、音楽活動、青果の生産者など多彩な顔を持ち、すべての活動に全身全霊を傾ける山田さんの「CHANGE」とは、なんだったのだろうか?【第4回/全5回】 

山田孝之 撮影/吉村智樹

「映画とは、集団で一人の人生のきっかけをつくる芸術」。山田さんが出演のみならず、制作の側にまわる場合も多いのは、映画は集団芸術だという観念がしっかりあるからだろう。

山田「自分が俳優だという意識はあまりない。俳優が特別特殊な仕事だとも思っていない。それよりも作品をつくる表現者の一人だという意識の方が大きいです。映画やテレビ、作曲や作詞にしろ、多くの表現者や技術者が力を合わせて作品が誕生する。自分はその要素を担う一人でしかないと思っています。“こう見られたい”って意識が少ないんです。その仕事を“やりたいか”“自分がそれを表現するタイミングなのか”、それだけなので。 

 演技の引き出しの多さに定評がある山田さんが、俳優と呼ばれることにこだわっていないのは意外だった。 

山田「自分で“俳優は特別なものだ”と考えても仕方がない。それよりも制作にかかわる人たちともっと仲間意識を持った方がいい。外資で映像作品が制作され海外に配信される時代に、日本の制作陣が一つになって、アジアが一つになって、ものをつくる。それが世界のためにも、いいことだと思うんです」