映画は集団芸術

 スクリーンで圧倒的な存在感を放つ山田孝之さん。映画は山田さんの表現を知るうえで特に重要なメディアだ。演じるだけではなく、時として演出やプロデューサーをも務める山田さんに、映画の魅力について聞いた。

山田「映画は“人が物事を考えるきっかけになる一つであるべき”だと思うんです。誰しも人生に“タイミング”ってあるじゃないですか。小説であったり、絵であったり、漫画であったり、音楽であったり、出会うタイミングというものがある。時には強く影響を受けて、人生が変わってしまう場合もあります。 

 映画もその一つです。一人の人生の“きっかけ”を生むために、100人、200人が集まってものをつくる芸術。それが映画だと思います。」

「映画とは、集団で一人の人生のきっかけをつくる芸術」。山田さんが出演のみならず、制作の側にまわる場合も多いのは、映画は集団芸術だという観念がしっかりあるからだろう。

山田「自分が俳優だという意識はあまりない。俳優が特別特殊な仕事だとも思っていない。それよりも作品をつくる表現者の一人だという意識の方が大きいです。映画やテレビ、作曲や作詞にしろ、多くの表現者や技術者が力を合わせて作品が誕生する。自分はその要素を担う一人でしかないと思っています。“こう見られたい”って意識が少ないんです。その仕事を“やりたいか”“自分がそれを表現するタイミングなのか”、それだけなので。 

 演技の引き出しの多さに定評がある山田さんが、俳優と呼ばれることにこだわっていないのは意外だった。 

山田「自分で“俳優は特別なものだ”と考えても仕方がない。それよりも制作にかかわる人たちともっと仲間意識を持った方がいい。外資で映像作品が制作され海外に配信される時代に、日本の制作陣が一つになって、アジアが一つになって、ものをつくる。それが世界のためにも、いいことだと思うんです」