俳優部は物語を届けられるセクション

――トム・クルーズさんなんかは、まさに命がけですが。

青木崇高 撮影/冨田望

 「やり方はそれぞれだと思いますけど、でもハリウッドはエンタメの力の強さを再認識したと思うんですよね。観ていると、体に力入りますから。もちろんジャンルにもよりますけど、観る人の体をちゃんと変化させたいんです。“わあ、気づいたら終わってた”とか。

 それって、たとえば子どものころに観たスピルバーグ作品だとか、そういうときってあったと思うんです。当時とは違っていまはメディアも進化していますが、それでもまだ訴えられるものはあると思うので、そういったところにアプローチしていきたいんです」

 ――エンタメの力を、それを届けられると信じているからこそですね。

 「届けるとか、そんな大それたことなんて言えないとかももちろんあります。ただこの仕事、たとえば僕は俳優部ですが、この部署にはそういう力があるんだと今は思っています。ここは、物語を届けられる可能性を持ったセクションなんだと」

 ――俳優部は物語を届けられるセクション、ですか。ステキです。

「技術を磨いていこうとか、感性を研ぎ澄ましていこうとか、よりよいものを届けるためにはどうしたらいいんだろうといったことも、もちろん考えてはいますけど、役者のプライド云々といったものには興味はないです。悪く言うつもりじゃなくて、そうしたものは僕にとっては窮屈になるだけで。ただ、重ねてになりますが、物語を届けられる可能性はあると思っています」 

 まい進し続ける青木さん。話していると、最初に抱いた柔らかな空気の印象だけでなく、やはりイメージ通りの熱い漢(オトコ)の部分が伝わってきた。エンタメの力を信じ、物語を届けられると信じている青木さんはこれからも色んな世界を見せてくれることだろう。

あおき・むねたか
1980年3月14日生まれ、大阪府出身。02年に映画デビュー。06年にNHKドラマ『繋がれた明日』で初主演を務め、翌年、連続テレビ小説『ちりとてちん』でヒロインの相手役を務めて広く認知されるようになった。10年には『龍馬伝』で大河ドラマ初出演。映画では、『るろうに剣心』シリーズの相楽左之助が高い支持を得た。ほか主な作品に大河ドラマ『平清盛』『西郷どん』『鎌倉殿の13人』、ドラマ『99.9-刑事専門弁護士-』『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』など。2023年11月公開の東宝ゴジラ70周年記念作『ゴジラ-1.0』では主人公の敷島が戦時中に出会う海軍航空隊の整備士・橘宗作を演じている。

●作品情報
映画『ゴジラ-1.0』
監督・脚本・VFX:山崎貴
音楽:佐藤直紀
出演:神木隆之介、浜辺美波山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆安藤サクラ佐々木蔵之介
(C) 2023 TOHO CO., LTD.
配給:東宝 
公開:11月3日(金)、全国東宝系
上映時間:125分