失敗しないはずの人生は「地獄だった」と明かすワケ

 晴れて武蔵野美術大学に合格、2009年には新卒で広告代理店に入社し、“失敗しない人生”を実現した。が、そんな理想のはずの会社員生活は「我慢しかないし、理不尽だし、地獄のようでした」と振り返る。

ーー地獄、というのは、どんな出来事を覚えていますか?

「うーん、どうがんばっていいのかわからなかったのが、いちばん辛かったですね。見る人によっては、僕の毎日は“がんばってるね”と思うことだったのかもしれません。でも、その“がんばる”の意味は、僕が思う“がんばる”と違う気がしたんです」

 徹夜は当たり前。がむしゃらに働き、朝方に力尽きて、オフィスに置いてあるヨギボーに倒れこむ。いちばん早く出社する人がタイムカードを押す音を目覚まし時計代わりに起きる毎日。それを3日ほど繰り返すこともざらだった。

「そんな生活を続けていて。そしたらある3泊目の朝、またタイムカードの音で起きたら、そのフロアでいちばんえらい本部長が出社してきたんです。もう役員ですから、超えらい人。そうしたら本部長がにこにこしながら“おはよう”と言ってきて。続けて“徹夜はダメだぞ”と言うんです」

 その言葉を聞いた直後、かっぴーさんは泣いた。ひとり喫煙所へと駆け込み、紫煙に包まれながら嗚咽を漏らした。

「ずっとがんばっていたから、なんか泣いちゃったんです。“いまのでたぶん、本部長の評価が下がったんだ。仕事ができない、会社に泊まるダメなヤツって思われたんだろうな”と思って」

ーーだいぶ追い詰められていたんですね。

「じゃあ、どうがんばたったらよかったんだろうって。どうがんばったらいいかわかったら、みんな苦労しないですよね。僕は小さい頃からずっと、自分ではがんばり屋さんだと思っていました。でも、結構がんばっているのに全然上手くいかなくて。努力に対してのリターンがなにもないんです」