「役が“東出のままだった”と言われたら勝ちだな、と思える」

――もちろん、東出さん自身と重なるとは思っていないんです。倉蔵も憲二も、中条も、全くタイプが違いますから。それなのに、役柄でありつつ、東出さんそのものにも見えるのが不思議で、ユニークで。 

「わかります。たくさん作品を観ていただいている記者さんや有識者の方々のおっしゃっていることはわかりますし、ありがたいです。
 ただ、似た言葉として色々観ていない方からも、“東出のままだった”というのは言われるんですよね。そうした声を聞くと、自分とも違えば、それぞれの役柄同士も全く違うんだけどなと思いつつ、そう言われたら“勝ちだな”と思えるくらい、その役になれていたのかなとも思います」

――そういうことになりますね。

「プロデューサーさんに“お前にぴったりだったって声が多いよ”と言われたりすると、しめしめと思ったりしています(笑)」

――私生活がにじみ出てもしょうがないとお話されましたが、東出さんに演じてもらいたくてオファーがあり、東出さんが演じるわけですよね。

「僕が役者を始めたころに理想としていたのは、フィリップ・シーモア・ホフマンやヒース・レジャーのように全く違う人物になることでした。中条の生い立ちと倉蔵や『Winny』の金子勇(Peer to Peer技術を用いたファイル共有ソフトを開発した実在のプログラマー)の生い立ちは全然違う。すると、同じ身体でも、出している声の場所が違ってくると思うんです」