民放ドラマで「宮沢りえと恋に落ちる役」を演じるきっかけに

 赤井さんのいうとおり、スクリーンで見た人こそ少なかったかもしれないが、主演の赤井英和はなにもかもに全力で挑み、監督の坂本順治、助演の原田芳雄、相楽晴子、麿赤児といった面々がつくりあげた輝きは、現在でも色あせることはない。

 同年の権威あるランキング「キネマ旬報の邦画ベストテン」では、宮崎駿の『魔女の宅急便』、北野武の『その男、凶暴につき』を上回り、今村昌平監督の『黒い雨』に次ぐ2位となっている。

佳子「宮沢りえさんが民放のドラマに出演するとき、りえちゃんがビートたけしさんとか内田裕也さんとかに、まだ東京で名前が知れてない人で 何か面白い大阪の役者さんっていないかなって聞いたんですって。りえちゃんって、そういうそうそうたる大人の方たちが回りにいたんですよね。そしたら、コピーライターの糸井重里さんがいらして。

 で、大阪に赤井英和っていうボクサーで映画撮った人がいるよ、っていうので、すすめてくれたんだそうです。

 役者として誰も知らない名前だったけど、この人おすすめだよって言ってくれて、それでりえちゃんのドラマに出た」

 1992年に放送された宮沢りえ主演のドラマ『東京エレベーターガール』(TBS系)で、赤井さんは妻子がありながら宮沢さんと恋に落ちる印刷所の営業マン・吉本を演じた。この起用も『どついたるねん』の影響で、この映画がまさにTHECHANGEとなったことの証明だろう。

ーー『どついたるねん』は映画『AKAI』にも引用されています。赤井さんはあらためてご覧になっていかがでしょうか。

赤井「まあ、映画みたいなドキュメンタリーだな、と」

ーー『AKAI』がですか。

赤井「いや『どついたるねん』が」

佳子「逆でしょ。逆じゃん。それ」

赤井「あ、逆や、ドキュメンタリーみたいな映画」