お客様がいらっしゃる……どうしましょう!

ーー30分前から! そういった緊張感が常にあるから、ずっと仕事がうまくいっているんでしょうか。

「そんなことはないと思います。ほんとうに、早く楽にしてほしいと思います」

 今回の朗読劇は、昭和の大スター・越路吹雪のマネージャーであり作詞家の岩谷時子の物語を、市毛さんが語る。2018年にドラマ『越路吹雪物語』(テレビ朝日系)で、同役を市毛さんが、越路役を大地真央さんが演じて話題になったことが、背景にある。

「舞台での朗読劇とドラマは、まったく別物ですね。ドラマは、初日はもちろん緊張しますが、始まってしまえばみんなが仲間ですから。打ち解けてやりとりができるので大丈夫なんですが、舞台って、まったくの一期一会じゃないですか。いくら知り合いの方が観に来てくれたとしても、お客様の前に立つとよくも悪くも緊張します。

 もちろん、お客様がいてくださることはありがたいし、力を引き出していただいていると思いますが、“お客様がいらっしゃる……どうしましょう!”みたいなところはありますね」

 緊張感が拭えないのは、舞台上から客席に視線を向けると、観客がどんな表情で舞台を観ているのかが、ありありとわかってしまうからだという。

 

「もっと目が良かったころは、お客様の表情が見えちゃっていたんですよね。見えちゃうのもつらいんですよ。見えなかったらいいのにな、と思うんですけど。それで、“つまらなくないかな”と思ったりね」