いつもの3倍くらいの拍手が後ろから聞こえてきた

 それは、2020年の夏の終わりのことだった。前方の客席に座り、ふと後ろを振り向くと、観客の姿よりも座席シートの赤い色が印象的に目に入る。チケットは満席として完売していたが、感染防止安全計画に沿い、収容定数を半分までに制限していたからだ。「舞台から見たらガラガラという感じだったと思う」と、市毛さんは振り返る。

「座った瞬間に“今日私は、怖いけど来た。絶対にあなたをひとりにはさせないから”と思いながら、すごい情熱を持って聴きました。それで、ほんとうに涙なくしては聴けないようなコンサートで。終わった瞬間、いつもの3倍くらいの拍手が後ろから聞こえてきたんです。ものすごい拍手の、ものすごい圧でした。ひとりひとりが、いつもの3倍くらいの拍手をしたんだと思います」

 舞台上の演者は、開催を自粛しようと思ったこと、エンターテイメントの仕事を続けることの意義を考えたこと、開催が怖かったこと……などを伝えたうえで「こんなにあたたかい拍手をくださって、ほんとうにありがとう」と感謝を繰り返した。

「“いやいや、私たちのほうが『ありがとう!』だよ!”という感じでした。誘ってくれた友達にも、ありがとうと伝えて、とてもいいコンサートでした」

ーー市毛さん自身に、その経験の以前と以後で心境などに変化はありましたか?