事務所に所属後に気づいた事実
晴れて事務所に所属した唐田さんだが、とあるギャップに直面する。
「そうしたらお芝居のワークショップが割とすぐ始まって、当時は正直、“なんでお芝居やらなきゃいけないんだろう? モデルにはお芝居というものが必要なのだろうか?”って思いながら、ワークショップを受けていたんですけど、“もう行きたくない”みたいに思い始めて。
ふとしたとき、事務所のホームページを改めて見て“やばい、女優さんしかいない”ってことを、事務所に入って半年後くらいに気づいたんです。
学生のときって、大人の人に自分の意見をいったりとか、“実はモデルになりたい”とも言えなくて。“どうしよう、お芝居嫌だよ”みたいな感じでやってたし、自分のなかでもやればやるほど向いてないし、楽しくないっていうのがすごく大きくなっていって……。
“このままやってても何もよくないな”って思いました。なので、20歳になる前くらいに“このままだったら辞めたいです”みたいなことを事務所に言ってたんですけど、そんなときに濱口竜介監督との出会いがありました」
2018年、濱口竜介監督による映画『寝ても覚めても』でヒロインの朝子役を唐田さんは演じた。濱口監督は、21年の映画『ドライブ・マイ・カー』で第94回アカデミー賞の国際長編映画賞を受賞しており、その作品は国内外で高く評価されている。唐田さんは、濱口監督からどういった影響を受けたのか。
「考え方だったり感覚だったり、すべて変わりました。それまで“お芝居ってどうやって演じるんだろう、演じるってなんだろう”とかすごい考えてたんですけど、濱口さんが抜擢してくださったあのとき、私も経験が全然なかった新人で。
初めての大きな作品で大きな役をいただいたんですが、“芝居って芝居をしなくていいんだ”っていうのが、すごく自分を楽にしてくれて。それからは、“まだまだできないけど、もっとお芝居のことを知りたい”っていう前向きな考え方に変わってから、女優業を頑張りたいっていう思いになっていきました」
「演じること」について率直に自分の言葉で表現した唐田さんと芋生さんのキャリアはまだ始まったばかり。今後、女優としてさらに活躍する姿を期待してやまない。
唐田えりか(からたえりか)
97年生、千葉県出身。16年に本格的に芸能活動に専念し、18年に濱口竜介監督の作品『寝ても覚めても』のヒロインに抜擢される。22年には映画『の方へ、流れる』で主演。23年12月には、主演作品『朝がくるとむなしくなる』が公開。
芋生悠(いもうはるか)
97年生、熊本県出身。14年に第3回ジュノン・ガールズ・コンテストでファイナリストに選ばれ、翌15年より本格的に芸能活動を開始。19年の映画『恋するふたり』、『左様なら』で主演をつとめたほか、22年『牛首村』での奇子役やドラマ『ワンナイト・モーニング』(WOWOW)など、多数の作品に出演している。
『朝がくるとむなしくなる』
主演・唐田えりか
芋生悠 ほか
監督・脚本 石橋夕帆
渋谷シネクイントほか順次全国公開中