「いまでも、吹き溜まりから生まれるのが「芸人」だと思ってます」
不思議なもので、規則正しい生活が嫌で芸人になったのに、サラリーマンより朝早く起きる仕事も多いし、労働時間がとんでもなく長いこともあって、この世界も決してラクじゃない。ただ、僕は決められたルールに従うことを窮屈に感じてしまうので、いまの不規則な生活が好きなんです。
最近は高学歴の芸人なんてたくさんいますけど、僕が吉本に入った頃は大学を出ている芸人すらいなくて、社会に適応できない人たちの吹き溜まりでした。いまでも、その吹き溜まりから生まれるのが「芸人」だと思ってます。
インテリジェンスのある人は理屈で考えてしまうんです。「笑い」を分解して、どんな構造になっているのか理解しようとする。そうやって書いたネタが面白かったとしても、人となりが伝わってこない。その人である必要がないんです。
学校や社会に馴染めなかった異質な存在が、お客さんに自分の個性を伝える技術を身につけて舞台に出る。
ネタの完成度は高くないかもしれないけど、表情や仕草、生き方が面白いと笑ってもらえる。もともと持っているものなのでブレないから、永続的にウケるんです。そんな人格や生き方そのものが芸人であってほしいと思ってます。
板尾創路(いたお いつじ)。1963年7月18日生まれ、大阪府出身。NSC大阪校4期生。1986年にほんこんと蔵野・板尾(現130R)結成。芸人としてはもちろん、俳優・映画監督としても幅広く活躍している。