上田谷真一さんはプロの経営者だ。東大卒、経営コンサルタント出身で、数々の会社の社長や会長を歴任してきた。
 経験や実績、見識などを買われ、社長や会長に就任し、らつ腕をふるうプロの経営者。いわゆるサラリーマン経営者が会社員としての成果や実績、人事評価や社内力学でトップに立つのに対し、プロの経営者は「実力」を認められ、抜擢される。一方で、創業者やその一族、古参の番頭などから煙たがれ、手足を縛られることも多い。株式会社三浦屋取締役会長の上田谷さんに「THE CHANGE」を深堀りした。【第2回/全5回】

「三浦屋」会長・上田谷真一 撮影/冨田望
第1回

 前回、三浦屋の数々の魅力を述べていたが、課題や問題点は感じなかったのだろうか。

「本来の三浦屋らしさが薄まっていることが一番の問題だとは思いましたが、勿論より近代化するために仕組みを色々変えないといけないと思いました。つまり地元密着・高品質・安心・安全・健康へのこだわりと言ったDNAを壊さないように収益性を高めるための打ち手を経営参画前から株主と話し合ってきました。

 変えるには、時間が必要な場合もあります。たとえば今は、本部でバイヤーが店頭に並べる商品を一括仕入れ交渉をする一方で、最終判断は各店舗が行っています。これは顧客を一番知ってる店舗が自由度を持つという意味では正しい面もあるのですが、効率面から見るとある程度本部集中するべきです。

 そこで大切なのは、現場の社員の皆さんにいかに納得してもらえるかーです。特に小売・サービス業や製造業など人をたくさんの人が働く事業では、戦略を最前線での社員や組織がが実際に動けるように落とし込むことが必須です。

 三浦屋では会長職であり、社長として店舗やバイヤーなどに直接指示をして動かすわけではありません。社長や部門長等を通じて、いわば間接的に操縦かんを握り、動かすことになります。

 そのためには、現場のリーダーである人たちに、こちらの意図や背景にある理由を理解してもらえるようにしていくことが大切です。彼らを通じて、各部署や各店舗の社員のことがわかり、動くようになるまで根気強くやるしかないと考えています」