頭で芝居しているわけじゃない

――役とご自身が混ざり合っているのかもしれませんね。

「いろんな役をやらせていただくほど、自分という人間にも厚みが出てきているような感覚があります」

芳根京子 撮影/有坂政晴

――面白いですね。ちなみにその感情が動く瞬間というのは、カメラの前で?

「カメラというより、相手の役者さんとのお芝居の瞬間です。お芝居ってキャッチボールなので。自分がコントロールできない感情の動き方になった瞬間、ふわ~っとなるというか。だから面白い。やめられないって思います。でもそれもいつもあることではないです」

――印象深かった瞬間をひとつ教えてください。

「『コタキ兄弟と四苦八苦』で、古舘寛治さんと滝藤賢一さんの兄弟に、私がエールを送ってもらうシーンがあったんです。そこは何度テストをやっても、本番も、何度も溢れてくるものがすごくありました。言葉にするのは難しいのですが、やろうと思っているわけではないんです」

――脚本を読んでいた段階では。

「役として感情を持っていかなきゃとは思っていましたけど、どうなるかなと思っていました。でも実際にそこに立ったら、頭で考えていたのをはるかに上回る感情で。やっぱり頭で芝居しているわけじゃないんですよね。そういった瞬間にぶつかったときに、“ああ、楽しいな”って。流れるプールにポーンって落とされた感覚です」

――流れるプールですか。

「自分の体を自分じゃどうしようもできない。うわ~って感じ。こっちですか、今度はこっちですか。みたいな。私サーフィンってやったことないんですけど、サーフィンみたいな感じでもあるのかな。波に乗って。すっごく楽しいです!」

 感情が動く瞬間を「すっごく楽しい!」と笑顔を見せる芳根さん。これからの10年も、さらにその先も、そのエネルギーで役を生きたものにし、見る人の感情もあっちへこっちへと揺さぶってくれるに違いない。

よしね・きょうこ
1997年、2月28日生まれ、東京都出身。2013年にテレビドラマ『ラスト♡シンデレラ』でデビュー。14年、映画『物置のピアノ』で映画初出演にて初主演を飾る。同年、NHKの朝ドラ『花子とアン』に出演。2016年後期にはNHK朝ドラ『べっぴんさん』でヒロインを務めた。ほか主な出演作に、1000人以上のオーディションで主演に選ばれたドラマ『表参道高校合唱部!』、『海月姫』『真犯人フラグ』『オールドルーキー』『それってパクリじゃないですか?』、映画『幕が上がる』『64 -ロクヨン-』『Arc アーク』等。『累-かさね-』『散り椿』(18)で、第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。最新の出演映画『カラオケ行こ!』では中学校の合唱部副顧問役を演じている。

 ●作品情報
映画『カラオケ行こ!』
原作:和山やま
監督:山下敦弘
脚本:野木亜紀子
出演:綾野剛、齋藤潤、芳根京子、北村一輝
(C) 2024『カラオケ行こ!』製作委員会
 配給:KADOKAWA 
公開:1月12日(金)