朝青龍の引退でのしかかる「横綱の重圧」

 その後、朝青龍は休場がちになり、22年初場所後、突如引退。「横綱の重圧」が白鵬1人に降りかかることになった。

「横綱として、私はどんな戦いを続けていくべきか……。悩みましたね。そこで私が下した結論は『勝つ』こと。いくら優しくても、いい人でも、横綱なら『勝つ』ことで強さを証明しなければならない。それができなければ、引退しかない」

 その後の白鵬は、勝つことにこだわり、63連勝、7連覇を達成。14年夏場所から15年春場所までは6連覇を成し遂げるなど、白鵬全盛時代を築いた。
「優勝に関しては、まずは貴ノ花さんのV22を目標に置き、次は北の湖さんのV24、そして朝青龍関のV25。そして、その後は千代の富士さんのV31。夢であり、最大の目標は大鵬親方のV32でしたね」

 14年九州場所、白鵬はついに大鵬に並ぶ、優勝32回を達成する。

「ついに、追いついた! という達成感、充実感はありました。追いつかせていただいたのですが、『次』に何を目指したらいいのかわからなくなってしまったんですよ。燃え尽きてしまったんですね。でも、『次』は、大先輩を追い抜くことだと自分を奮い立たせました」

 こうして、白鵬は37回まで優勝回数を伸ばしたのだが、16年秋場所を負傷で全休、17年春場所は途中休場するなど、次第に優勝から遠のいていった。

 白鵬は32歳になっていた。

取材・文/武田葉月

■宮城野 翔(みやぎの・しょう)
本名:白鵬 翔(はくほう・しょう)1985年3月11日 モンゴル ウランバートル出身。第69代横綱。2010年初場所から63連勝を記録するなど輝かしい戦績を残す。2021年に現役引退。2019年に日本国籍を取得し、現在は年寄・宮城野。生涯戦歴 1187勝247敗253休。受賞歴 優勝45回/殊勲賞3回/敢闘賞1回/技能賞2回