改めて向き合った「アーバンギャルドらしさ」

おおくぼけい 撮影/冨田望

――楽曲面ではどのようなアプローチで制作されましたか。

おおくぼ「前作(※20年のフルアルバム『アバンデミック』)から3年経って、その間に天馬くんも浜崎さんも僕もほかのアーティストに楽曲提供をしながら、アーバンギャルドの活動をしてきた。だからこそ、アーバンギャルドでどういう表現をしようっていう気負いがありましたね」

松永「アーバンギャルドって、全員がソロ活動など課外活動を行っている。コロナ禍もあってその流れが加速していた。もちろんアーバンギャルドで毎年ツアーを行って、大規模なライブもやっているのですが……いざ新曲ってなった時に、“アーバンギャルドってどういうコンセプトだったっけ”とか、“アーバンギャルドというバンドのらしさってどういう部分なのだろう”って、もう一度見つめなおすタイミングだったのかなって思います」

――松永さんのソロワークとアーバンギャルドはどのように違いますか。

松永「僕のソロには、自分にとって中年男性のドキュメントみたいな歌詞を書いている。反対にアーバンギャルドはファンタジーでありフィクションなんです。誤解を恐れず言えば、浜崎容子という巫女が伝えてくれる物語。アーバンギャルドは、浜崎さん自身の表現を大事にしているし、彼女の声を通過することによって、初めて響く歌詞だったりするんです。

 アーバンギャルドの歌詞って歌い手が違ったら、全然響かない歌詞になるって思う。たとえば、すごく情熱的だったり、ソウルフルに歌われても、グっとくる歌詞ではない。ある意味、ボーカルの表現が一番難しいんじゃないかなって曲ですね」

浜崎容子 撮影/冨田望

浜崎「なにも考えてないです」

おおくぼ「ははは」

松永「それがいいんだよね」

浜崎「ファンの子からもらったお手紙で、“この歌詞がすごく好きです”って書いてあるのを読んで“よい歌詞だな”って初めて気づくみたいな(笑)」

松永「その何も考えていないで歌っているという姿勢が、曇りのないガラス鏡のような感じなんだと思う。曇りのない鏡だからこそ、ファンの心を反射して映し出せるんですよ」

浜崎「私のボーカルは本で言うなら文字でいいというか」

松永「言葉をそのまま曇りなく映し出すことは、やっぱり彼女の身体性がないと成立しないものだと思っていますね」