多くの映像作品に出演し、時には監督も務める俳優・哀川翔。1984年、一世風靡セピアの一員としてレコードデビューし、その後、俳優として“一世風靡”するに至った彼にとっての「THE CHANGE」とはーー。【第2回/全2回】

哀川翔 撮影/貴田茂和

 映画『ゼブラーマン』の座組が出来上がったとき、映画の番宣でよくバラエティ番組に出させてもらったんだけど、ひと言もしゃべらずに終わることもあって。「そんなにバラエティ嫌ですか」って言われたけど(笑)、ただ周りが早すぎて、しゃべる間が全然分からなかったからで……。バラエティって難しいなと思ったけど、それが逆に良かったのか、いろいろな番組に出させてもらえるようになったんだよね。

 こうした巡り合わせっていうのは人生において、やっぱりとても大事なことだと思うんだよ。今回出演させてもらった映画『一月の声に歓びを刻め』の三島有紀子監督との出会いもそうで、声をかけてもらえたのはすごくうれしかったですよ。

 出演した「八丈島編」をひと言でいうなら、父と娘の物語。プライベートでは自分ならどう対処するかなって。

 俺が演じた赤松誠という男性はちょっと不器用で、人づきあいがうまくない。それはカミさんを亡くしたことが影響しているんじゃないかって解釈しましたね。娘の海と5年ぶりに再会して食事をするシーンでも、どこまで彼女に立ち入って良いのか……という距離間を考えたら、まともに正面から娘のことを見れなくなってしまって。

 でも、誠のセリフで「海を泣かせる奴は俺が許さない」ってあるけど、やっぱり娘を想う父親なんですよ。「八丈島編」は30分足らずだけど、脚本を読んだときにしゃべりづらいセリフが一つもなかったんですよ。自然で無理がなく、スッと出る。これがすごく大事なことで、この作品のすごさの一つだと思ってますね。

 おかげさまで、今年でデビュー40周年を迎えるけど、不遇の時期って俺の中ではなかったと思うんだよね。60歳を超えてから、それと同時に仕事の量は減っていくけど、それは普通のこと。だから自分の中で何とかしなきゃって思ったことは、これまでも一度もないです。どちらかというと遊んでいたい(笑)。