感動のシチュエーションもなく上京
その後、SKE48のメンバーとして芸能界で活動を始めることになったのだが、この時生まれ故郷の愛知県豊橋市から上京。それまでの牧歌的な田園風景から、一気にコンクリートに包まれた大都会へと生活圏も変化した。
「でもその時も、気付いたら東京に居たという感じで。いつ東京に来たんだろう……みたいな感覚なんです(笑)。家族もいつから私が東京に住んでいるのか覚えてないくらいなんです。上京する時に駅のホームで別れを惜しむみたいな感動のシチュエーションも無く、気付いたらいなくなっていたね……って言われていました」
SKE48には約7年在籍していた。このグループは脱退する時に”卒業”と銘打って、一大卒業コンサートを開催するのが伝統行事ともいえるイベントで、毎回必ず当事者もライブを観に来ているファンも大きく感涙する。松井さんにとっても大きな「CHANGE」となる節目となった──。
「だと思われるかもしれませんが、この時は自分の中でも区切りを付けていたところがあったんです。でも、お芝居をやりたいという気持ちは芸能界に入った時からずっと持っていて、それはグループを卒業しても変わらなかったので、自分の目指す場所も変わらなかったんです。なのでそんなに大きくチェンジって思うことはなかったんですよね」
しかし、本格的に役者業を始めると、実際には一役者として大きな変化を迎えることになることを体験したのであった。
松井玲奈(まつい・れな)
1991年7月27日、愛知県生まれ。O型。2008年デビュー。主な出演作は、映画『よだかの片思い』、NHK朝ドラ『まんぷく』『エール』、大河ドラマ『どうする家康』など。24年3月8日には映画『ゴールド・ボーイ』が公開。18年小説家デビューし、翌年初の単行本『カモフラージュ』を刊行。23年12月より「小説すばる」にて『カット・イン/カット・アウト』を連載中。
●作品情報
映画『ゴールド・ボーイ』
3月8日(金)より全国ロードショー
配給:東京テアトル/チーム・ジョイ
監督:金子修介
出演:岡田将生、黒木華、羽村仁成、星乃あんな、前出燿志、松井玲奈、北村一樹、江口洋介
沖縄の有数企業・東ホールディングスの会長夫婦が崖から転落し死亡した。警察は事故として処理しようとするが一人娘である静(松井玲奈)はそのことに対し疑問を抱く。その頃、静の夫である昇(岡田将生)の前に朝陽(羽村仁成)ら3人の子供が現れる。そして朝陽は昇にある動画を見せる……。中国の動画サイト「iQIYI」で総再生回数20億回を誇るアジア最高峰ドラマ「バッド・キッズ 隠秘之罪」(邦題)の原作小説を、舞台を沖縄にして日本映画化したクライム・エンターテインメント。