一つの価値観で人の価値は決まらない

 音楽の先生って芸術家じゃないですか。優秀だから先生になっているわけで、それゆえに下手な生徒の気持ちが分からないというか。でも、教えるって、できない人の気持ちを分かることがとても大事なんじゃないかなと思うんです。

 だからこれは僕の提案なんですが、この場合、たとえば学校に補助先生を設けてもらって、その先生から飯尾君にこんな声をかけてほしいんですよね。

「たとえ歌が下手でも、そんなことは君の価値を一つも下げていないよ。だって君は野球がうまいじゃないか。面白いし友達もたくさんいるじゃないか。だから全然気にすることはないんだよ。ただ、たとえば野球が下手な人がいても、君は笑っちゃいけないよ。その人にも他に得意なものがあるはずだから」って。

 こういうことを言えることこそが、共感力であり、想像力なんですよ。一つの価値観で人の価値は決まらない。そう思えることで、人は強く生きていけると思うんです。相手の気持ちを想像して共感する。そうやって相手の価値観を認めることで、その人が救われることもあるんじゃないかな。実際に僕が芸能の道を目指すようになったきっかけも、それと似たようなことだったんです。

 また僕の好き嫌いの話なんですけど、小学生の頃、給食が苦手でね。当時は学校の先生も厳しかったから、いっつも食べ終わるまで教室に居残りさせられてたんですよ。ほとんど毎日、教室にポツンと一人残されて……ほんと逃げ場がなくて。