カトパン激似ネタは「顔だけ」。別のネタで勝負に

 ご本人のお墨付きももらったが、壁にぶち当たる時期がくる。

餅田「なかなか芸の幅を自分で広げられなくて。私、顔だけなんですよ。声は低くて似ていないし、MCの方からなにか振られたときにワードも出せないし。体重の増減で似る・似ないが変化するし、ごりごりにカトパンのメイクをしているわけではなく、もう素材だけで、顔の角度だけだったから。そうなると限界がくるんですよ。それで、“この辺までだよね”というのが、自分の中でわかってしまって。それまで小野島さんはいっぱい考えてくれました。やるだけのことをやってくれて」

小野島「モノマネ芸人さんて、自発的にモノマネをやって自分で落とすところまでが一連の流れだと思いますが、餅田さんはほかからのツッコミありきだから」

餅田「オーディションにも受からなくなってきていましたしね」

小野島「もうひとつ勝つためには、これ以外のネタをもっとやっていかないといけないな、という時期がきたんです。それで、餅田さんがちょっと昭和ポルノの世界のお姉さんに見えるので、それもいいかもね、となって『細かすぎて~』のオーディションに持っていったんです」

 ’19年、『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』(フジテレビ系)のオーディションで、餅田さん演じる奥さまと、小野島さん演じる使用人による禁断愛を描く「昭和ポルノの世界」を披露すると、スタッフが沸いた。

小野島「"これで作ってほしい”とおっしゃっていただいて、これならぜんぜんいくらでも作れる! イケる! と思いました」

 その日から、餅田さんへの演技指導が始まった。所作や目線、ひとつひとつを餅田さんに落とし込んだ。

小野島「僕、寺山修司さんの作品が好きで。そういった世界観からインスピレーションを得たのと、小学生になるかならにかのタイミングで、なんだかわからないんですけど、うちの親父が松竹版の『八つ墓村』を定期的にすごい見せてくる時期があって。金田一役は渥美清さんで、「祟りじゃー!」とか言いながら、吐瀉物を吐き散らしてみんな死んでいくようなやつを見せられて」

ーーすごい英才教育ですね。

小野島「だから僕、松竹版じゃないと満足できないんですよ」

 寺山修司や『八つ墓村』を下地とした「昭和ポルノの世界」シリーズをゴールデンタイムで披露すると、その年の12月14日放送『細かすぎて~』を制することとなったのだ。コンビで、である。カトパンから昭和ポルノへ。見事な振り幅を見せた駆け抜けて軽トラはいまも、新境地を開拓中だ。

駆け抜けて軽トラ(左から小野島徹、餅田コシヒカリ) 撮影/三浦龍司

駆け抜けて軽トラ(かけぬけてけいとら)
小野島徹(おのじま・とおる)。1987年9月16日生まれ、埼玉県出身。
餅田コシヒカリ(もちだ・こしひかり)。1994年4月18日、宮城県出身。
2017年にコンビを結成。餅田さんによる、フリーアナウンサー加藤綾子さんにそっくりな顔と、似ても似つかないボディのギャップで一躍人気に。2019年12月14日放送『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)内の『博士と助手~細かすぎて伝わらないモノマネ選手権~』で優勝。以降、同番組の常連。