心を楽にするための「メンタルコントロール」

「“僕が点数を取れなかったのは、先生の教え方がわかりにくいからじゃないか? なら、自分でちゃんと勉強しよう”と思ったら、予習復習するのが苦じゃなくなったんです。ただ、120%の力で気合いを入れて予習復習すると、“これだけやっても、また点数が悪かったら怒られる……”とプレッシャーになってすごく苦しいと思うんですよね。だから僕は、気楽な気持ちを意識して、半分の力も出さずに勉強していました」

 追い詰められ、自分の心身が脅かされてしまう前に、クロちゃんは無意識のうちにメンタルコントロールをしていたのだ。

クロちゃん 撮影/有坂政晴

「学校では“人のせいにしちゃいけません”と教えられますけど、僕は逆に“人のせいにしないといけないな”と思ったんです。それがいちばんの分岐点かもしれないですね」

ーー「人のせいにする」というと、ふつうは人を悪者にすることで、自分を正当化しようとする行為です。でもクロちゃんの場合は、自分が苦しくなる理由を分析するために、「原因はその人にある」と考えるわけですね。

「なにか問題があったとき、人のせいにしたほうが楽になれるんだな、と思いましたね。もうちょっと成長して、部活の先輩に手をあげられながら怒られたときも同じでした。“この先輩はきちんと説明ができないから、すぐに手が出ちゃうんだな。論破しようと思ったらできちゃう人なんだろうな”と思うようにしていました」

 誰だって好き好んで怒られたいとは思わない。「そんなに怒らないで」と言っても、怒る人は変わらず怒り続ける。ならば、怒りを浴び続けるのは不毛である。そんな不毛さを乗り越えるために、自分でなんとかするしかない、とクロちゃんは立ち上がったのだ。

「それでもしんどいと思ったら、“この人は、僕の伸びしろを感じて、僕のことを思って怒ってくれているんだな”と考えましたね。もし相手にそんな意図がなかったとしても、そう思うことでやる気のパーセンテージを上げることができるんです。あと、そう思わないと、その人のことを嫌いになっちゃう。会うたびに“うわ!”となるはイヤですから」

「人のせいにする」という考え方がけっして単なる「責任転嫁」にならないのは、根底にある、クロちゃんの心根の優しさゆえだった。

クロちゃん
1976年12月10日生まれ、広島県出身。2001年、団長安田HIROとともにお笑いトリオ『安田大サーカス』を結成。コワモテフェイスとギャップのあるハイトーンボイスが特徴で、近年は『水曜日のダウンタウン』(TBS系)で大ブレイクし、「愛すべきクズキャラ」として人気を集めている。アイドル好きとしても知られ、アイドルグループ『豆柴の大群』アドバイザーとしての顔や、アイドルフェスプロデューサーとしても才能を発揮している。