福岡を出る時に母と交わした約束

 その言葉は今田さんにとってひとつの転機になった。

「学生の役のオーディションがあって、当時の私は19歳だったんですが、オーディションに来ている皆さんは本当にまだ高校生だったり、私よりも若くて“これはヤバいな”って思ったことがあるんです。高校を卒業するタイミングで両親と、“この仕事を続けるうえで、22歳までに何かしらの結果が出なかったら一旦考えようね”という約束をしていたんです。なかなか受からないという現実、それに追い打ちをかけるように“あと3年しかない”という自分の中での焦りを感じていた時に戴いた言葉なんです。その言葉のおかげで“そうか、別に全部に受からなくてもいいんだ”という気持ちになれたと思います。もし受からなかったとしても、それは自分がダメだというよりも単純にご縁が無かったんだなって思うようにすることで、すごく楽になったんです。オーディションを楽しめるようになったことは、私にとって大きな転機だったと思います」

 こうした変化は演じる役柄がきっかけとなることも多いそうだ。

「変化のきっかけについては具体的にこの作品というのではなく、年齢と共に徐々に学園ものの学生役からお仕事ものの大人の役が増えてきて、会話も日常会話だけじゃなく、それこそ今回の『花咲舞』での専門用語や説明調の会話のお芝居が増えてきたというのも影響があると思いますね。共演者の方も学園ものだと同世代の方が多くて、それはそれで刺激的な毎日ではあるんですけど、『花咲舞』みたいに多くの先輩方とお仕事をさせていただくことが増えたということも、転機に繋がっているのかもしれませんよね」

 プライベートでは現在27歳。20代の前半と後半での“変化”に違いはあるのだろうか。

「上京したての頃は、明日のこと、明後日のこと、ほんとに目の前のことで精一杯で、何かを振り返ったり、先々のことを考えて何かをするという余裕が無かったんです。仕事のやり方や自分のペースもまだ分からない。そんな状態でお仕事をしてたんですが、それが徐々に25歳を越えたぐらいから、ひとつ何かを考える余裕が出来たというんでしょうか。お仕事でいうと、その作品や役についてもう少し深いところまで、先のことまで考えられるようになったので、準備期間が長く取れるようになった……それが公私を含めての私の中でとても大きな変化だったのかなって思います」

 今田美桜はこの先どこへ向かうのか──その行方を見守り続けたい。

今田美桜 (いまだ・みお)
1997年3月5日、福岡県出身。2015年に映画『罪の余白』で映画初出演。2018年に放映されたドラマ『花のち晴れ~花男 Next Season』(TBS系)に出演しブレイク。その後、ドラマ『3年A組 今から皆さんは、人質です』(日本テレビ系)、『いちばんすきな花』(フジテレビ系)、映画『わたしの幸せな結婚』、『東京リベンジャーズ』等といった話題作に出演。2025年度前期のNHK連続テレビ小説『あんぱん』で主演(ヒロイン)・朝田のぶ役を演じることが決定している。

【作品情報】
ドラマ『花咲舞が黙ってない』
日本テレビ系にて毎週土曜日、夜9時~放送中
放送後TVer、Huluで配信
https://www.ntv.co.jp/hanasakimai2024/