田中泯はダンサーである。その踊りは70年代より国際的に高い評価を受け、今なお世界各国からオファーが絶えない。また、田中泯は俳優である。映画『PERFECT DAYS』では踊るホームレスを演じ、カンヌ映画祭のレッドカーペットの上を歩いた。そして、田中泯は農業者である。山梨県に拠点を構え、泥だらけになって畑仕事に汗を流す。それら以外に執筆活動も行い、2024年3月にはエッセイ集『ミニシミテ』(講談社)を上梓した。そんな、アクティブに躍動を続ける79歳の「THE CHANGE」とはーー。【第3回/全4回】

田中泯  撮影/川しまゆうこ スタイリスト/九(Yolken) ヘアメイク/横山雷志郎(Yolken) ブランド名/ヨウジヤマモト プールオム(お問い合わせ先:ヨウジヤマモト プレスルーム)

 俳優としての田中は近年、最先端で活躍する若い才能との異色のマッチングがなされる機会が多い。たとえば、2020年には米津玄師の『カナリヤ』という曲の ミュージックビデオに出演し話題となった。

田中「あれは是枝裕和監督が呼んでくれたんです。僕は自分から『あの人やりたい』とか、『共演したい』というオファーをすることはないんですよ。ただ、いつの頃からかは忘れましたが、確かにそうした機会は増えましたね」

 藤原秀衡役で出演したNHK大河ドラマ鎌倉殿の13人』では、源義経役の菅田将暉と相対した。菅田とは、映画『アルキメデスの大戦』『銀河鉄道の父』でも共演している。そのような若くて勢いのある相手との共演時は、どのような気持ちで挑むのか?

田中「基本的に“負けるもんか”と思ってやっていますよ(笑)。たとえば、菅田さんは大変な才能の人だから、“才能において負けても他では負けないぞ”と。それをむき出しにするわけじゃないですが、そういう気持ちはありますね。自分の歳を下げちゃうんです。一般的には、70歳には70歳のステージがあるというように言いますが、僕は自分でそこから降りて行っちゃう」

 高齢者であるが老いていない。むしろ、若者が持っていない強さを持っている。そうした部分が唯一無二の個性となり、若い出演者が多い作品における重鎮的な役割を果たすことが多い。

田中「僕の演技、お芝居を見た人はことごとく『存在感がある』と言う。評価のあらかたがそれなんです(笑)。存在感があるということを単純に言えば、僕がいることに対して存在を感じるってことですよね。それはどういうことなんだ? たとえば、オーラがあるということなのか? 目をひきつける何かがあるのか? 他の人と同じようにして座っているだけでも違うと言ってくれる人もいる。それはいったい何なのだろうかと、いつも考えています」