「初心を忘れないように」

――ええ? それは役者として、年々自分の演技に対する目が厳しくなっている証拠ですよね。

「うーん。確かに時々振り返って考えるようにはしていますね。初心を忘れないようにと思っていますし、前になった作品をまたやるときには、以前はどうだったかなと軽く流して見ます。『ベルサイユのばら』の場合は、すごく特殊な芝居作りだったんですけど……でもけっこうナチュラルに作っていたつもりだったのに、10年ぶりに見たら全然違いましたね。だけどこの作品をナチュラルにしすぎても合わないだろうし。すごく迷いながら、きっと今回も作っていくのだと思いますけど」

――役者という仕事をされている方々は、よく“ゴールはない”とおっしゃいますね。

「そうですね。舞台は毎日やっても、終わった後に、いつも必ず今度は“ああしよう”“こうしよう”という課題を見つけるようにして、どこかで自分を客観的に見ている自分がいます。相手のお芝居との間はどうだったか、それに対する表情や動きはとか。そういった研究っていうんですかね。舞台は毎日挑戦ができますし、何かを発見していく作業は、常に心掛けています」

――発見と挑戦の繰り返しですか。

「そうですね。お客様の反応や呼吸も感じながら」

凰稀かなめ 撮影/冨田望