大学教授の方々も全面協力

 まさに体を張った論文だった。

「胸の汗がどのくらい1日出るかを専用機器で測らなきゃいけないんですが、最初はなかなかうまくいかなくてね。でも、教授方が我慢強く指導し、献身的な協力をしてくださったおかげで、無事必要なデータを取ることができました。私は機器の取り扱いひとつからして何もわかりませんでしたから、教授方がいらっしゃらなかったら到底無理でした。私ね、最初は大学教授みたいなえらい人は、世の中の底辺を這いずって生きてきた私のような人間なんかと対等に話をしてくれるわけがないと勝手に思ってたんです。ところが、面接の時に卒論の内容に興味を持ってくださって、その後すごく面倒見てくださって。論文が間に合わないかもとなった時には、御自宅に泊めてくださいました」

 一年かけてまとめあげた研究成果は、日本家政学会第50回大会で「乳ガン手術経験者の術後症状とブラジャー等の着用に関する実態調査」というタイトルで発表された。

 15歳の春に進学の夢破れた少女が、36年の時間をかけ、人生が色濃く反映する学術成果を立てたのである。

 もしドラマなら、このエピソードがクライマックスになったことだろう。

 だが、タツヨさんの人生は違う。71歳お笑い芸人デビューという、さらにとんでもない展開が待ち受けていたのだ。

つづく

おばあちゃん
1947年2月12日生まれ、東京都出身。東京NSCに24期生として入学し、2019年4月に72歳でデビュー。2023年6月には「神保町よしもと漫才劇場」の過去最高齢となる76歳で劇場所属メンバーとなる。2024年3月には『ひまができ 今日も楽しい 生きがいを - 77歳 後期高齢者 芸歴5年 芸名・おばあちゃん』 を上梓した。

【作品情報】
『ひまができ 今日も楽しい 生きがいを - 77歳 後期高齢者 芸歴5年 芸名・おばあちゃん』 (発行:ヨシモトブックス 発売:ワニブックス)
芸人になった理由や活躍するまでの紆余曲折について、懸命に生きてきたおばあちゃんの人生訓が詰まった初の書籍。

ひまが