応援してくれる人たちがいるから

 芸人として世に出たい若者。あくまで優先されるべきは彼らだ。自分は一歩下がった位置で構わない。

 それでも勝ち抜き戦に出るのは、応援してくれる人たちがいるから。

「一度落ちた時は『もうこれでいいかな』とも思ったんです。私みたいなものが舞台にあがって、テレビ取材を受けて、本まで出して。十分といえば十分なんですけど、こんな私でも見に来てくださるファンがいる。だから、もう一度無理しない範囲でがんばろうと挑戦してみたら勝ち残りました」

 こんな自然体で勝ち抜き戦に挑める“若手芸人”、おばあちゃん以外の誰がいるというのだろう。どうして落ちないのか自分でも不思議というおばあちゃんだが、人気の原因は冷静に分析している。

「たぶん、みんなが自分のおばあちゃんと私を重ねて見てくださるのでしょうね。東京には地方から出てきている人が多いでしょう? だから、きっと、自分のおばあちゃんに対するいい思い出を、私に重ねて見てらっしゃるのだと思います」

 ファンには若い女性が多いそうだ。

「よくファンレターをいただきますよ。感謝です」

 サイン会も何度か開催したが、その際には全国各地からファンが駆けつけた。

「どうして私のことを知っているの? と聞いたら、YouTubeなどいろいろ見て、それでどうしても会いたかったとのことでした。劇場だとネタしか見れないけど、サイン会だったら何かお話できるかなと思って来たんです、って」

 現在のおばあちゃんは「老人あるある」を川柳にして披露するソロ漫談のスタイルをとっているが、芸風はあくまでのんびり優しく、毒は軽い自虐程度。心和むお笑いだ。ファンはそんな姿に癒やしを求めているのだろう。

「 ファンレターの内容もほとんどが悩み相談です。進路の悩み、仕事の悩み、いろいろですけれど」