16歳で芸能界に足を踏み入れた唐沢寿明のプロフィールは、THE CHANGEに満ちている。『仮面ライダー』シリーズなどのスーツアクターを経て、ミュージカル『ボーイズレビュー・ステイゴールド』でデビュー。NHK朝の連続テレビ小説『純ちゃんの応援歌』、大河ドラマ『春日局』(NHK)で注目を集め、『愛という名のもとに』(フジテレビ系)でブレイク。以来、代表作を並べるだけでページが埋まってしまうほどのキャリアを重ねてきた。最新作の映画『九十歳。何がめでたい』で、昭和気質満載の編集者を演じる唐沢のTHE CHANGEとは──。【第3回/全4回】
唐沢寿明が俳優として歩み出した1980年代後半は、日本がバブル景気に向かっていて、誰もが元気で明るい未来を夢見ていた。その時代を経験した唐沢から、現代はどのように見えるのだろう。
「ばくは、俳優としてある程度食べていけるようになるまで本当にお金がなくて、高価なもの……車とか欲しいとも思わなかったよね。だって、どう頑張ったって買えないのに、欲しかったらつらいだけじゃない」
同世代がブランド物のスーツに身を包み、競って高級車を乗り回していたころ、唐沢は怪人のスーツの中で汗だくになり、さまざまなアルバイトに駆け回っていた。
「だからこそ、やっと自分の車を手に入れたときは嬉しかった。当時はマニュアル車だから、エンストすると女の子から〝へたくそ!〟ってバカにされるんだよ。必死で練習したよね。女の子に好かれたくて(笑)」