劇団員になるまで7年かかった

 でも、200ドル貯まったところで、東京に出てきました。それが20歳になって間もない3月の終わり。劇団に入って、演技や制作の基礎を学ぶつもりでした。ところが、すでにどこの劇団も研究生の募集は終わっている。僕はそんな情報さえ知らなかった。結局、つてを頼って唯一試験を受けられたのが青年座。当時、青年座は沖縄がテーマの舞台もやってたから、僕に興味をもってもらえたのかもしれません。

 3日間の試験の最後は3分間の自己アピール。僕が話せるのは沖縄のことしかない。

「基地周辺では今もいろんな事故や事件が起き、沖縄の人間はものすごく苦しんでいます」という話をしたら、皆さん聞き入っていましたね。こうして、なんとか青年座に入ることができました。

 でも、研究生から準劇団員、そして劇団員になるまで7年かかった。やはり沖縄訛りが抜けないのは大きかったですね。仲間には一緒に飲みに行っても、訛りが出たら必ず指摘してもらったし、日本語アクセント辞典をボロボロになるまで使って、標準語を覚える努力をしました。

 もちろん、当時はアルバイトなしでは食えません。しかも芝居をやっている期間は働けない。だから、赤坂でバーテンをやったり、ゴミ回収車の運転手をしたり。生命保険の勧誘もしたけど、加入してくれたのは当時つきあっていた彼女だけでした。

津嘉山正種(つかやま・まさね)
1944年2月6日。沖縄県生まれ。那覇商業高校卒業後、琉球放送勤務をへて、1965年に青年座に入団し、舞台『NINAGAWA マクベス』、映画『男はつらいよ』シリーズ、テレビ『踊る大捜査線』シリーズなど、舞台、映像の出演の他、声優、ラジオなどでも幅広く活躍。第61回芸術選奨文部科学大臣賞、第15回声優アワード功労賞などを受賞。

津嘉山正種ひとり語り
『10カウント ある老ボクサーの夢』
沖縄で上演してきた朗読劇の最終章。津嘉山が自身の人生を重ね合わせ、夢と現実、過去と未来を行き来しながら展開する物語。
作・演出:津嘉山正種 演出協力:菊地一浩/日程:7月5日(金)~7日(日)/会場:タイムスホール(沖縄県那覇市)
『命口説』
昨年、沖縄で上演した朗読劇を東京で再演。
構成台本・演出:津嘉山正種/日程:8月4日(日)~6日(火)/会場:渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホール
お問い合わせは「劇団青年座」HP(https://www.seinenza.com/)まで