■照明が当たって丼の中を覗いたら、刺身がキラキラ輝いていた

 そうして編み出したのが、たとえば料理の乗ったお皿に両手を添える、「グルメの天使の羽」という技。これだけでおいしく見えるんです。他にも、お寿司を食べる際は少し傾けて持ち上げ、ネタを照明でキラキラと光らせるとか、そばをすするときの音を工夫するとか、独学で研究していました。誰からも「これが正解」と教えてくれなかったことで、料理の見せ方と食べ方については追求を続けていたんです。

彦摩呂 撮影/貴田茂和

 一方で、味の表現方法に行き詰まりを感じ出していました。そんな中、2005年にロケで北海道の網走に行ったとき。海の幸がたくさん乗っかった海鮮丼が出てきたんです。照明が当たって丼の中を覗いたら、刺身がキラキラ輝いていた。そのとき思わず「うわ〜、海の宝石箱や」と言ったら、それがだんだん評判になっていた。実は料理を擬人化したり、比喩の表現を使ったりするのはご法度だと思っていたので、放送でもカットされるかと思ってたんですが、視聴者が面白がってくれたと聞いて、思わぬ発見でした。

 後に僕を世に送り出してくれた師匠の秋元康さんとラジオ番組で共演した際、「彦、まさか食事をした際のコメントがエンタメになるなんて、これっぽっちも考えたことがなかった」と、最高の誉め言葉をいただきました。

 また、テレビ放送では尺に収まりづらいですが、おいしい料理の裏には物語が必ず存在しています。家族の絆や愛情、ドン底から復活したエピソードなど、料理を作る人が100人いたら100通りの物語がある。この先は、そんな目に見えない調味料を感じることができるオッサンになりたいと思っています。

彦摩呂(ひこまろ)
1966年9月15日、大阪府出身。88年に、アイドルグループ『幕末塾』メンバーとしてデビュー。やがて活動の幅をドラマから情報番組にも広げ、リポーターとして活躍。現在はグルメリポートの第一人者としてお茶の間に知られる人気者に。他にも映画、ラジオ、舞台、ユーチューブなどなど、幅広く活躍している。

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