アーティストのアイデアを「必ず優先」
プロデュース業を長年続けているA・Tさんはつねに周りからの意見を取り入れるようにしている。
「プロデュースするアーティストに“これがやりたい”というアイディアがあるときは、それを必ず優先します。アドバイスはするけれど、“それは面白くない”とは絶対に言わない。
プロデューサーは、アーティストの良いところを伸ばすのがいいプロデューサーであって、意見に反対する時にはきちんと代案を出す。その場合は、なぜそっちがいいのかっていうのをちゃんと説明できなきゃいけないって思うんです。そうすればお互いに責任が取れるし、それでうまくいけば俺も“すごい”って言われるからね(笑)」
どうしていつまでも謙虚でいられるのか訊ねてみたら、「本当にそう思っているから」という言葉が返ってきた。
「もちろん、自分にしか作れない曲を作っているっていう自信はあります。『Bomb A Head! 』の頃から、トラックの作り方が変わっていないんです。リズムマシーンを使わず、サンプリングという手法を使っています。そうすると、自分の好きな音が作れる。HIPOHOPって、時代とともに変わってきていますよね。
基本的には、テンポが違っても自分の好きなHIPHOPありきの音作りをしているので、よく“音が古くない”って言われます。もしかしたら、どこかの時代では古いって思われる音かもしれないけれど、また時代が回ってきてそれがうまくハマっているんじゃないかな。時代にありがとうって感じですね(笑)」
つねに柔軟な姿勢は、音楽性にも反映されている。こちらから目をそらさずに、身ぶり手ぶりを交えながら、楽しそうに語ってくれた。
えむしーえーてぃー
北海道札幌市出身。シンガー・ラッパー、作詞・作曲家、音楽プロデューサー。大学在学中からオリジナル曲でライヴを始め、数多くのコンテストで入賞。1993年、m.c.A・Tとしてavex traxより『Bomb A Head! 』でデビュー。以来、数々のヒット・チューンを生みだす。DA PUMP、AAA、屋良朝幸など多くのアーティストに楽曲を提供。近年も自身のライブや、アーティストへの楽曲提供、プロデュースなど精力的に活動している。