「仮面ライダーに変身するよりも嬉しかった」

 しかし、念願だった仮面ライダーの変身ベルトの仕事は大変だったという。

「じつはベルトに使うサンプルボイスが200個くらい必要だったんです。だからレコーディングは大変でした。歌うみたいなボイスも多かったんですよ。のどはきつかったけど、楽しかったですね。全国で俺の声が聞こえるっていうことが仮面ライダーに変身するよりも嬉しかった。それに、歴代のライダーが集まると必ずベルトの声が聞こえるのですごく嬉しいですよね」

 m.c.A・Tの音楽人生の転機を、あらためて聞いてみた。

「自分の音楽人生における出会いでありがとうって思うのは、プリンスの音楽との出会いと、ニュージャックスウィング(1980年代中盤にアメリカ合衆国で発生した音楽スタイル)の音を作ったテディー・ライリー(アメリカ出身のミュージシャン・プロデューサー)を知ったことですね。自分にとってすごくハマってしまった音楽だった。その音楽をベースにテンポを変えてみたり、そういう研究ができたことが今の音楽制作の骨子となっているのかなって思う」

 同時期にデビューしたTRFと並び、エイベックスでは最長の在籍期間を持つ。しかし、「まだまだです」と笑う。

「30年も活動を続けていれば、大御所と言われてもしかたないですよね(笑)。でも自分としてはまだ全然って思っていますよ。自分よりも若手のアーティストと共演しても、“負けたくない”って思っちゃう(笑)。もちろんプロデューサー気質もあるので、並ぶときにはかならず俺が後ろに下がっていますけどね」

m.c.A・T 撮影/三浦龍司