千代の富士の現役最後の対戦相手に!

 そして、91年夏場所初日、後世に語り継がれる好取組が組まれた。

 小さな大横綱・千代の富士vs18歳の新鋭・貴花田の一戦だ。貴花田の父、貴ノ花(藤島親方)は、現役最後の頃、同じく細身の千代の富士に、次世代の相撲界を託した。時を経て、貴ノ花の次男・貴花田が、36歳の千代の富士に挑んだこの一番に勝利したのは、貴花田だった。

「時代が変わった」

 千代の富士時代の終焉を印象づけるこの一番は、大横綱に引退を決意させる相撲になった。

 その2日後、3日目は、千代の富士ー貴闘力の取組が組まれた。なんとこの相撲で、貴闘力は、千代の富士の腕をつかんで土俵下に投げ、とったりの決まり手で初勝利する。

「体力の限界、気力もなくなり……」

 千代の富士は貴闘力との一戦を最後に引退を表明。貴花田と貴闘力が大横綱に引導を渡し、時代は一気に若貴時代へと突入していく。

(つづく)